仕事をしているあなたも好き
                 
 



リズムよく、ほんの少し足早に歩く音が聞こえてくる。
いつ聞いても心が明るくなる音だ。

「ミルフィーン」

呼ぶ声に気付いてミルフィーンは辺りを見渡し俺を見つけた。

両手いっぱいの荷物。籠に入れてはあるが今にもこぼれ落ちそうだ。

「ランドルフ」

俺達兄妹と幼馴染である彼女は周りに人がいなければ敬称はつけずに幼い頃から呼んでいたままに俺達を呼ぶ。
正式にマリオンに付く少し前から余所余所しい時期もあったが今はそれも消えて以前と変わらない所に落着いた。

もちろん、完全に元通りではなかったが。
というのも、お互いに相手のことを意識していたから幼馴染の関係とは別の関係にもなりそうだったから。

気持ちのうえではもうわかりあえていると思っている。
それともそう思うのは俺だけなのだろうか。
不安が心を占めている今、俺はマリオンではなく俺の傍についていて欲しかったのに。

「大変そうだな。持つよ」

遠慮の言葉を聞く前にミルフィーンの腕から籠を持ち上げる。口を開く前ににっこり微笑むと先に歩き始めた。
しかし、この荷物は……

「またマリオンが我がままを言ったのか」

「私が作ったお菓子が食べたいって言ってくれたの。
 急だったから準備には戸惑ったけど我がままじゃなくてうれしいことよ」

「毎回だろう?そういう時は断わればいいんだ。
 ミルフィーンのお菓子はおいしいけど……マリオンには甘いんだから」

そう、少し妬ける。
ミルフィーンはマリオンに甘い。
兄として誠心誠意を持って仕えてくれているのはうれしいけれどその気持ちを俺にももっと向けて欲しい、
何て思ってしまうのは妹に対しての焼もちなのだろうか。

「……それだけ好きなんだろうな」

「ランドルフ?」

「何でもないよ」

俺の呟きに聞き返したミルフィーンに軽く首を振ると少しでも一緒の時間を確保すべく、
マリオンへの部屋へと共に向かったのだった。



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