仕事をしているあなたも好き
                
 



ひっそりと静かな空間。城の中でも限られたものしか入ることが出来ないこの空間にマリオンは足しげく通っていた。
そうでもないとそこの主と会うことは難しかったから。

仕事に熱心だが人と長時間接することを好まない。
そっけなくされてもきつい言葉を投げられても諦めなかったのは彼の寂しさを知ったからだと思う。
一番彼から感じたのは一人でいるということへの寂しさだった。

「何か手伝えることはある?」

「……今はいい」

最初は相手にもされていなかったけれど今では仕事があれば私にもできることを探して手伝わせてくれる。
一緒に作業することも新鮮で楽しいけれど、シェルフィスの仕事をしている姿を眺めているのも好きだった。

「今日はもう少しいられるの。ここで見ていてもいい?」

恐る恐る訊ねる。
直ぐに駄目だとは言わないとわかってはいるけれどそれでも不安は付き纏う。
シェルフィスの心は繊細で壊れやすくて物事に対して敏感だから。

「……嫌ならとっくに追い出している。いつまでも傍においてはいない」

その言葉に俯きかけた顔を勢い良くあげたマリオンだったが見えたのはその場を立ち
書棚へと向かうシェルフィスの後姿だった。

冷たいようでそれでいて本当は人の心にとても敏感で優しい。
私はそんなシェルフィスだから好きになったのだと思う。



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