ヴァルアスの日常
休暇編 2
木漏れ日が深い森の所々に差し込んでいる。もうしばらくすると太陽の位置が変わり暑くなるだろうが
今は風が通り抜け心地よい。ヴァルアスは手を上にあげ大きく伸びをするとそのまま倒れるように横になった。
「あ〜最高!」
仕事から解放され朦朧としてくる意識をその要求通りに委ねられるのは最高に気持ちがいい。
普段体が資本であるが忙しくて羽を伸ばせる機会はどうしても限られてしまう。
だからこうして思いっきりゆったりできる時間はヴァルアスのとってとても貴重だった。
「これであとフレイアがいればな」
可能な限りフレイアは傍にいるようにしてくれているが彼女の体は一つしかない。
たとえヴァルアスが嫌だと思っても他からお呼びがかかればそちらへといかなくてはならなくなる。
隣にいてくれる存在がいないことへの心細さ。それはフレイアがくる前には感じることのない焦燥感にも似たものだった。
「フレイア」
眠りの世界へと引き込まれつつあるヴァルアスの口から大切な人の名前が紡ぎだされる。
それはただ一つだけの特別であるかのような音。
瞳は閉じているのにまるでそれが当たり前のようにヴァルアスの腕は自然と隣にいる人の肩をそっと包み込むように
伸ばされていた。
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