ヴァルアスの日常
       休暇編 1



「隊長!どこに行くんですか?!」

隊員達に黙ってこっそり抜け出そうとしていたヴァルアスは後ろから襟首を掴まれのけぞった。
細心の注意を払い、もう少しで敷地内から出られたというのにどうして放っておいてくれないのだろう。
目ざとい部下に舌打ちをすると体にかかっていた手から抜け出ながら部下へと向き直った。

「日程表を見なかったのか?俺は今日午後から休暇を取っている。
 お前達に呼び止められることはないんだからな」

「だったら何でそんなこそこそ出ていこうとしてるんですか。ええ、確かに見ましたよ。
 午後から休暇だってね。でも午前中にはありませんでしたよね。何人もの隊員が見ています」

「……急用ができたんだ」

視線を逸らしながら言うヴァルアスに説得力はない。
休暇表をヴァルアスの前へと突きつけるとある一か所へと指さした。

「これはいったい何ですかねぇ、隊長」

「何って別に何もないだろう」

「そうですか?ここにはフレイアが休みって書いてあるんですけどどうやら彼女こそ急用で昨日帰りに
 報告して言ったらしいんですよ。もちろん知っていましたよね?」

「まあ、それは俺は隊長だからな。もちろん知っているに決まっているだろ」

「ああ、そうでしょうね。そこは問題じゃないんですよ。いえ、問題なんですが些細なことなんです。
 実はフレイア、今日サーシェス様から呼び出しを受けているらしいんですがご存じでしたか?」

「え?そうだったのか?」

ヴァルアスが答えた途端、部下の顔つきが変わった。手に持っていた日程表に手をかけると大きく切り裂く。

「!おいっ!!」

「いいかげんにしてくださいっ!あなたは毎度毎度、同じことを繰り返してっ。
 フレイアの休みの時くらい、離れていてあげようっていう気はないんですか!!」

破かれた日程表を呆然と見ていたヴァルアスだったがフレイアの名前が出ると表情を変え
一気に部下へと詰め寄った。

「おいっ、無茶言うな!フレイアがわざわざ休みをとってサーシェスと二人きりなんだぞ!
 何をしているかわからないってことだ。それなのにおまえは不安にならないのか!
 それにそれを俺に黙っていろとでも?!」

「不安って、だって休みって言ったってあのサーシェス様とでしょう?きっと仕事に関係することに決まっています」

「おまえそれはサーシェスを良くみすぎだ。あいつはああでいて肝心な所は抑える奴だからな、
 油断も隙もあったもんじゃない」

力説するヴァルアスの頭の中から完全に仕事のことは消え去っている。
これでは論点からどんどんずれるばかりではないか。

「もうっ!いい加減にしてください!こんなことばかりじゃ仕事になりません。
 たまのさぼりは目をつぶりますけどこうしょっちゅうだと……言っちゃいますよ」

「おまえっ」

「観念してください。もうこちらもなりふりかまっちゃいられないんです。
 仕事も滞ってはいけませんからね。いいですか、これ以上続けるようならフレイアに言いますよ!」

がっくりと肩を落としたヴァルアスに反論の余地はない。切り裂かれた日程表を渡すと気が晴れたのか
部下のしかめつらの顔は満面の笑みに変わったのだった。



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