小さなお茶会  
        
 



「……マリオンッ!?」

「マリオン様っ」

あまりにもあっけらかんと言うマリオンの言葉にレイアの息は止まりそうになった。
言いたい言葉があったが突然のビックリ発言に声も引っ込んでしまう。
そんなレイアをまるで年下の少女を見る様にマリオンは優しく微笑んで見つめた。

「隠すのも心配するのもなしよ。あなたの気持ちは様子を見ていてわかったの。
 ここまで言い切るのは飛躍的な考えかもしれないけど私は二人がそうなってくれるのは大歓迎よ!」

キッパリ言い切ったマリオンは心底そう思っているらしい。
余分なことを考えず他に振り回されずに自分の意見を言えることは素晴らしいことだと思う。
だが何事にも限度というものがあるし、ましてやそれが自分に関わることであれば余計に黙ってはいられない。
本来なら自分の身分を考えれば相手を否定するなどできはしないが、レイアはここが本来の場とは違う非公式の場と
判断して抑えきれなかった言葉をマリオンに吐き出した。

「……マリオン様。確かに私はカーク様には良くして頂いています。
 ですがそれはあくまで臣下、お付きの護衛官としてのこと。気さくには接していても決して余分な感情などあるとは
 思っておりません。それにたとえ冗談だとしてもそんなことを言ってはカーク様にご迷惑がかかります」

「レイア、それは本当にあなたの真実の言葉なの?
 もちろんいろんな事を考えての末、出た言葉だと思っているわ。あなたが言いたいこともわかる
 ……でも兄上の気持ちは本当よ。それとも今のあなたは戸惑っていて気持ちがついていっていないのかしら?
 ねえ、レイア。もしあなたに少しでも兄上を好きという気持ちがあるのならお願い。どうかその気持ちから逃げないであげて」

真剣な表情が、瞳がレイアへと想いを伝える。カークの気持ちを受け止めて自分の気持ちを見つめて認めてあげて、と。

そんなこと急に言われてもわからない。
彼の気持ちはもちろん、自分の気持ちだってわかっていないのだから。
こんな風に普段の自分の行動からは予想もつかないことをしてしまう自分にさえ戸惑ってしまっているのだから。

自分の気持ちでいっぱいになって黙って俯いてしまったレイアの肩へふと優しい感触が触れる。

「レイア様……」

そこにあるのは自分と同じ戸惑いの表情。自分と同じ身分違いの相手への想いを抱いている少女。
その想いの形が自分と同じであるかどうかはわからないけれどでも確かに自分と同じ立場である存在。

「レイア様、私にも最初はわかりませんでした。
 私のランドルフに対しての気持ちが幼馴染に対しての好意かそれとも一人の男性への恋する気持ちか。
 それに私と彼とでは何もかもが違う。そのことに悩みもしました。切なくて、苦しくて。
 いろんな気持ちではち切れそうになってもう何も考えたくなかった。
 でも決断をしなくてはならなくなった時最後に残ったのは彼を失いたくないという気持ち。
 他の何かを失っても失いたくなかったもの。そこに残ったのは真実の私の心からの真実の気持ちだったんです」

「ミルフィーン」

「私とレイア様では相手への想いも違いますし、同じ立場であるようで同じ立場ではありません。
 だから私とレイア様に同じ答えが出るとは限らないでしょう。
 それでも私はレイア様の気持ちを感じることができると思っています」

儚げで優しくて自分とは全く違う少女。
自分のように強くはない。そう思っていたのに目の前にいるのはまぶしいくらいに強い輝きを持った存在。

迷いを断ち切るだけでこんなにも強くなれるのか。想いを強く持つだけでこんなにも優しくなれるのか。
レイアの心に新鮮な驚きの気持ちが届いた。

「難しく考える必要はないと思うの」

二人のやり取りを黙って聞いていたマリオンがポツリと呟く。

「わからないのならわかるまで待てばいい。自分の気持ちをすぐに決め付けることはないと思う。
 普通に接する中で感じて育っていく気持ち、気付いて行くこと。最後に残ったものが本当の気持ちなんじゃないかしら」

私にもよくわからないけどね。

ペロッと舌を出しながら言うマリオンは身分など関係のない普通の少女にしか見えなかった。

「そう……かもしれませんね」

何がどうなるのか、どの答えが正しいのかなんて決められるはずもない。
だったら自分の思うままに感じるままに普通に過ごして普通に接して。
そこから出てくる気持ちがあればそれに従ってみる。
そんな簡単で単純でいいのかもしれない。

レイアの顔に自然と微笑みが浮かんだ。それは何事かを吹っ切れた偽りのない、
心を写しとったような無邪気な笑顔だった。

「さあ話は一端ここまでにして……食べましょう!ミルフィーンのお菓子は最高なんだから!」

マリオンの弾む声に一気に場が和む。

明るい光と風とそして笑顔。テーブルに並ぶのは幸せのかたち。
小さな小さな幸せな想い。

いつもとちょっと違う楽しい時間。少女達の声が幸せを運ぶ。



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