色彩時間
3
ルディエラ。あなたは知らなかったことですが、私はずっと前からあなたを見ていたんですよ。
きっとあなたはびっくりされるでしょうね。私があなたのことを見ていたなんて。
きっかけはあなたの父上でした。あなたのことは上司の娘として認識はしていましたが、
それ以上の関心は特別にはなかった。そう、最初はね。
私が竜使の剣について並外れた興味を持っていることにあなたの父上は気付いたんです。
今思えばまんまとあの方の策略にはめられた気がします。まあ、あなたをもっと知ることができたのですから
結果としては良かったのですけど。
あなたの身辺は私自ら調査をさせていただきました。あ、変な意味ではありません。
単にあなたの事を知りたいという純粋な気持ちからです。
あなたのことに夢中になって、仕事に影響が出てしまうほど真剣になって調べてしまったんです。
自分でも意識しないうちにね。
……そんな顔をしないでください。あなたには不快な思いをさせてしまいましたか?
仕事とあなたを一緒にするなんて考えてみれば失礼ですよね。
すみません。でもどうしてもあなたのことが知りたかったんです。
ルディエラ、あなたは私にとって興味が尽きぬ存在なんですよ。あなたの父上から娘の婚約者候補になって欲しいと
言われた時はチャンスだと思いました。あなたの傍にいるきっかけができるのですし、これまで以上に貴方自身を知る事が
できるのですから。
それなのに……さすがですね、あなたの父上は!私以外にも婚約者候補を用意しているなんてね。
あの方らしいといえばらしいのですがそれでも許せないこともあります。
まあ、私を認めてくださっている証拠かもしれませんが。
群れをなしている男どもはどうでもいいんです。どうせたいした男じゃないですから。
私が手を下すまでもなく勝手に引き下がるでしょう。自分の分というものをわかっていれば自ずとそうするはずです。
でも一番の強敵は彼ですよ。ひょうひょうとしてあなたのことを本心でどう思っているのかわからない。
この私にでさえつかませないなんて。
しかし関係ありません。
ふふふっ。私としたことが少し弱気になってしまいました。情けないですね。
それとも自分でも気が付かないうちに彼を意識していたのでしょうか。
あなたに対しての想いがまだ足りない証拠ですね。
でもそれだけ私も無意識に必死になっていたんでしょう。
許してください。決してあなたをおろそかにしていた訳ではないのです。
私の意識があなた以外のものに向きすぎていたのか、それともあなたを知る時間がまだ足りないのでしょうか。
想いが深くなければあなたの傍にいることができない。でもそれはどうしたらわかるのでしょう?
私は誰にも負けていないと思っているのに。
それだけでは足りないと言うのなら、ルディエラ。私は今ここで誓います。
これから先あなたのことを私のできる限りの全身全霊で守って見せます。私にしかできない方法で。
他の誰かと一緒だなんて我慢できません。ルディエラを好きである私は一人しかいないのだから。
たとえ今この時時間が止まろうともかまいません。そうしたらあなたは私一人だけのもの。
私だけを見させてみせる。他のものを見ることも出来ないほどあなたを抱きしめて、それがたとえあなたにとって
苦痛になったとしても離しはしない。
あなたは私から逃れられない。私をあなたのとりこにしたこと、それが罪なのだから。
覚悟してください。あなたを私に閉じ込めてしまいましょう。
あなたの世界は私の世界と一つ。これから先出て行くことのできないふたりの世界。
未来(さき)までこのままで。
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