色彩時間
4
この気持ちの果てはいったいどこにあるんだろう。
物心ついた時からずっと一緒だった。
俺達がまだ小さな頃、ルディエラが俺の後を必死になって追いかけてくるのがうれしくて
わざとあいつを引っ張りまわしたりもしていた。幼いながらも他の奴と話しているのを見ると何故か
もやもやした気持ちでいっぱいになって放って置くとすっきりしないのはわかっていたが自分から
のぞいてみようなんて思わないように心に蓋をしていた。
今ならその気持ちもわかるような気がする。
それだけ俺は必死だったんだ。自分で自分の気持ちに制限をかけようとしていた。
この気持ちに気付くことを。
いわゆる少年時代をすぎてからはその気持ちを何かで紛らわせようとして
そのためにたくさんの女性と付き合い……おっ、と、今のは言葉のあやだ。
もとい俺にはたくさんのよき異性の友人がいたが(まだ、なんか誤解を招いてしまいそうだな)
あくまで節度ある付き合いで留まっていたと言えた。
まあ、彼女達がどう思っているかはわからないけどな。
俺にはルディエラを相手に何かをしていた方が有意義で納得のいく時間だったんだ。
そんなこんなで、俺の感情はいつまでも変わらずに日々は進んでいくはずだった。
あんなことさえなければ……!
*
俺にも責任があった。ルディエラには話していないがひそかにおじからおまえについて行くよう頼まれていた。
決して表立ってはそんなそぶりは見せないが叔父なりの心配の仕方だと思う。
俺にはわかる。もし俺が彼の立場ならきっとそうするだろうから。
最初はただ妹みたいないとこが無茶をしないように見張るくらいの軽い気持ちでついていった。
いつも同じ仕事をしているよりは違うことをしていたほうが気分転換にもなるし。
もちろん危険な場面では俺がささっと片付けると言う活躍の場も想定にいれていたけれど
その程度のことだったのに。
何だよ!あれはっ!
変な野郎はくっついてくるわ、竜の奴はルディエラにべったりになっちまうわでとんだことになってしまった。
でも、最悪とも言えることは俺が自分の気持ちに気付いたことかもしれない。
ルディエラがアルドラの森で炎に包まれて姿が見えなくなった時、あの時の感情は自分でも信じがたいことだった。
いや、必然だったのか。今まで溜めていた感情が一気にあふれ出してルディエラに隠し切れなくなってしまった。
俺の複雑な想い、俺自身でさえ気付かなかった、向き合おうとしなかった心の底の想い。
無理やりすりかえようとしていたルディエラへの想いが俺の中で目覚めたのがわかった。
あきらめるしかない。自分をいつまでも騙すことなんてできない。
そんなことをしていたら俺はきっと後悔をすることになる。
気が付かないうちにあの笑顔が他の知らない男のものになっているなんて。
許せるものか!!俺の前だけで見せる表情全てが俺以外の奴にも知られてしまう!?
冗談じゃない!!
小さな頃から大切に見守ってきたルディエラが俺から離れていくのをどこか頭の一部ではわかっていたつもりだったのに、
とんだ思い違いだった。俺の全てを投げ出してもいいと思ったんだ。おまえを救うことができるのならば!
……今回はおじには本当に感謝している。俺ではないけれどルディエラの命を救うことにはなったのだから。
だがそのことだけだ!いくら俺が叔父に認められていると言ってもそれだけで優位になるとか、
そんな甘い見方をする人物ではない。あくまで実力のあるものがルディエラを手に入れることができるんだ。
ふんっ!いいだろう。いくらどんな奴が来ようとも最後には俺が勝利者だ。
俺には今までの分もあわせておまえを愛することができる。
身内としてもそして一人の女性としても。
覚悟するがいい。心行くまで味あわせてやる。
俺の全てを他の何も思い出さないくらいに。
俺だけの大切な宝物。ルディエラという俺だけの宝石、俺の唯一の存在(もの)。
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