幸せへと繋がる日 
            
 



幸せとはなんだろう。
幸せを手に入れられたら何かが変わるんだろうか?幸せであれば満たされることができるのだろうか?
そんなことをあなたは考えているかもしれない。
それともそんなことさえ思い浮かんでいないのかも。

でもそれでもいいの。
あなたが幸せを知らないと言うのならあなたが幸せを実感できるまで私が傍にいる。

おこがましいかもしれない。迷惑かもしれない。

一年に一度の特別な日。その日は誰もが幸せである権利があると言う。
何が幸せかなんて人それぞれでどんな時間を過ごすかも自由ではあるけれど
私はあなたとともにいることができるだけで幸せを感じることができるの。

今すぐでなくていい。いつかあなたが私と同じように感じてくれる日が来てくれたら……。



                       *

いつもは大勢の人が慌しく行き来している城の通路も今日は静けさが支配していた。
誰とも行き会わないせいなのか、それとも自分の感情が高ぶっているせいなのだろうか。
パーティ会場を抜け出し足早に進むマリオンの脳裏に先程までの光景がまるで今も実際に
体感しているような感じに浮かんでくる。

「ミルフィーン、レイア……」

最初はいろいろと考えすぎて迷っていたようだったけれど最後には二人とも幸せが溢れ出しそうなほどの笑顔だった。
二人とも大好きだから自分の想いを遂げられたらいいと思う。
その相手が自分の兄達なら余計に。

お互いに不器用で相手の気持ちを汲み取りすぎて全てがうまくいかない部分もあるけれどお互いに気持ちがあれば
そんなこと関係ない。
想う気持ちが見ているこちらに伝わってくる。それだけの気持ちがあれば時間はかかったとしても必ずうまく行く。

「私もそんな関係になれたら」

自分の気持ちは変わらない。
いつでも傍にいたい。隣にいてあなたの気持ちを感じたい。
そしてあなたも私と同じ想いになってくれたら私は今以上の幸せを感じるだろう。
そんな日が来て欲しいけれどあなたの心は幸せを感じてくれるだろうか。
あなたの過去は過去になってくれるだろうか。

あなたと共に微笑みたいから私まで拒絶しないで。お願い、シェルフィス。



                           *

「どうしてここへ?」

いつもと変わらない様子と声。同じ城内なのにここは全くの別空間のようだ。
光が本を傷めすぎないように考えられた空間は一見開放感に溢れているかのようだが
夥しい数の蔵書がそれを遮っていた。
そんな中、シェルフィスはいつもと同じ作業をしている。城内の音も届かない部屋で一人過ぎ行く時間を過ごしていた。

「どうしてって……来ちゃいけなかった?」

「……そんなことはない」

少しはマリオンが来るのを待っていてくれたのだろうか。
こうして会っているだけで幸せを感じる気持ちがよりいっそう浮上する。

「いつもと違うから」

「え?」

「おまえがいつもと違う服装をしているから、ここにこうして来てよかったのかと……」

「私は来たい時にここに来ているのっ」

突然大きな声を出したマリオンにシェルフィスは驚いたように目を見開いた。
だが、驚きの表情は浮かんでもどこか寂しげな物怖じしているようなシェルフィスの様子にマリオンは苛立ちを感じてしまう。
二人で居る時にできる空気はたとえ言葉はなくとも重苦しいものではなく、自然で何も気を使わなくてもいいような安心感さえ
感じるものであったのに。

そう思っていたのにシェルフィスは違ったのだろうか。自分だけの独りよがりだったのだろうか。

マリオンは堪えきれない気持ちをぶつけるように下げていた両手同士をギュッと握り締めた。



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