おいしいもので幸せを
3
連日暑い日が続く。
毎年前年度以上の猛暑を記録し、これも温暖化の影響かと体で実感をする。
そのうち平均気温が体温を超す日も遠くないかもしれない。
「う〜、何もしたくない〜」
あまりの暑さに涼香の頭は考えることを拒否し、体は涼しさを求めてゴロゴロと床の上を移動している。
行儀が悪いかもしれないがクーラーが部屋になく扇風機は長時間かけ続けると体がだるくなるために窓を全開にして
少しでも風が入ってくるのを頼りにしているのだが……
「そういう時に限って風がないし」
昼を過ぎれば今度は太陽の光が入ってきて部屋をどんどん暖めてと言うよりは暑くしてくれることだろう。
緑を置いたりよしずやすだれで防いでも今すぐこの暑さをどうにかすることは出来ないし完全に暑さを消し去るのは到底無理だ。
そんな所で我慢をする位ならだるい体に鞭を打ってでも本屋に行って涼むとかすればいいのに、と言うかもしれない。
でもそれこそ涼香にとってはきわどい問題なのだ。
クーラーの利いている場所で一定の時間を越えると頭が痛くなったりお腹が痛くなったり。はては本当に熱が出たりして。
後のことを考えるとまだ止めたりつけたりしながらでもこうして扇風機を回転させて部屋にいる方がいい。
「冷たいものも飲みすぎると辛いし、アイスばっかりもねぇ」
選択を誤ればかえって口の中がベタベタしていつまでも後味が残ってしまう。
「ご飯の時のデザートも兼ねて何か作ろうかな。う〜んと今ある材料は……あれならできそう!」
いくら暑いからといっても何も食べないわけには行かない。
一日二日ならそれでも何とかなるかもしれないが、この夏中それで過ごすには余計な症状をプラスしてしまうだろう。
食欲がない時は食べられそうなものを食べる。
それが続くと良くないとは思うが、涼香にとってここ最近頭に描いていたもの。
それは夏向きの料理にも合う後味さっぱり、お腹にも優しいデザートで。
「余分に作って今食べてもいいし」
俄然やる気になった涼香はよいしょと起き上がると台所へと足を進めたのだった。
ナイ豆腐(牛乳かん)
□材料(5人分)
寒天 4g(棒寒天の場合は1/2本) 水 250cc 砂糖 40g 牛乳 200cc
シロップ 砂糖 50g(1/2カップ) 100cc
□事前準備(棒寒天の場合)
寒天を30分位水に浸しておく。膨張してきたら水をしぼって細かくちぎる。
□作り方
1 水に寒天を加えて火にかける。寒天が溶けたら砂糖を加えておよそ2/3(220g)位まで煮詰め裏ごしする。
*色がくすんだ色になりますが大丈夫です。裏ごしはとろみがあってなかなか網を通りにくいですので
少しずつの方が早く通ります。
2 火からおろしこれに牛乳を加えて混ぜ合わせる。
3 耐熱のガラスの器などに流してください。(深い器、ガラスのボウルなど)荒熱を取ってからの方がいいですが
置きすぎると鍋の中で固まってしまうので注意。
個別で食べないのなら大きい器にドーンと流してください。その際に浮いた泡は取った方が見栄えも口ざわりもいいです。
4 シロップをつくります。
鍋に砂糖と水を入れて火にかけ2/3位まで煮詰めて冷ます。冷蔵庫で冷やしておくと更にいいです。
5 3が固まったら包丁で切れ目を入れます。食べやすい大きさで縦横に。(杏仁豆腐のように)
器の縁から静かにシロップを流しいれて揺すると一つ一つに離れる。
6 あとは好みでフルーツミックスやみかんの缶詰などのフルーツをいれても。
* 寒天に牛乳をいれて長く加熱すると細かい塊が出きて口ざわりが悪くなるので火からおろして必ず混ぜてください。
寒天は常温で固まります。食べる時には冷たい方がおいしいので冷やして食べてね!
「食欲がない時にはこれを食べておけばお腹が膨れるし、海草だからダイエット効果もあるし。
寒天やゼリーの粉を夏は常備置いておくといいかも」
冷たいものが欲しくなるけど、取りすぎは体の調子を壊してしまうからこれはいいかもしれない。
でも砂糖を入れてあるわけだから必ずしもダイエットとは言えないのかな?
「いいのよっ!夏場は食べられないより食べれた方がいいから!これなら簡単だしね」
夏を乗り切る工夫。いろいろとあるだろうけどまずは体を整えて。
食欲減退気味の今ならやせられるんだろうな、と頭の片隅にチラッと思いながらも涼香は目の前の欲求を満足するために
器へと手を伸ばしたのだった。
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