おいしいもので幸せを
2 クリスマスは計画的に?
街を彩るイルミネーション。今年の流行の色と造形は?
クリスマスソングに耳を傾けながらプレゼントやレストランの予約は早めに済ます。
よしっ、これで完璧!
「って、そんな訳ないでしょ〜〜〜〜〜っ!」
イルミネーションやクリスマスソングはオッケー。
レストランで食事、までは良し、としよう。
でもなんでそれが
「恋人や彼氏と一緒になるのよっ!」
独身の適齢期女性であればクリスマスというイベントは恋人と過ごして当然でしょう、なんて考え押し付けないで欲しい。
クリスマスを、そんな時期になったんだな〜って、一人家で過ごすのを楽しみにしている女性がいても
不思議じゃないのにあたかも人を変わり者みたいな目で見ている。
「ふ〜ん、あなた寂しい思いしてるのね。私じゃとても耐えられないわ」
そんなセリフをいつもネチネチ不愉快な言葉をくれる同僚が言ってくれた。
「個人の気持ちがどうだってあなたには関係ないでしょうっ」
口から出掛かった言葉をグッと堪えきる。
涼香が言った所で相手は負け惜しみだの、妬んでるだの、勝手に言うだけだ。
余計に怒れて疲れることはしたくないし、ましてや自分自身を見失いかねないことは絶対したくない。
「人のことを言うより、あなた自身もクリスマスケーキにはならないように気をつけてね」
と言った言葉には
「何言ってんの。訳わかんない」
馬鹿にするような返事がその場を後にする涼香の耳に届いただけだった。
*
クリスマスケーキ。
見た目も鮮やか、味も楽しめて思わず前にするとニッコリ笑顔が出てしまう。
涼香だって毎年この時期には買ったり食べたりしているし、嫌だなんて全く思わない。
ただ気をつけなければならない部分もあるということを頭に置いておこうとしているだけだ。
見た目も味もちょっとしたことではわからないもの。
だけど確実にわかることはこの時期だけの特別なものにはやっぱり特別なことがされてしまうことはさけられなくて。
普段と同じものにほんのちょっぴりプラスしただけで人の興味がそちらに行ってしまうのはイベントものにはつきものだ
といえるだろう。
もちろん興味を引かれることはいいことだし、それに伴って何かが負担(価格とか、それを手に入れるための一苦労などなど)
になるのは仕方がないとも思う。
でもあきらかにこれは?と思うものもあることは否定できないだろう。
“数量限定、そのままのおいしさをあなたに”がモットーならこれには当てはまらない。
が、何種類かあるクリスマスケーキを数十個ずつとか数百個を作っている所は見た目、味はパッとはわからないけれど、
実はふたを開けてみたら何日か前に作ったスポンジやケーキ自体を “冷凍保存” していました、ってこともあったりする。
それを知った時、気持ちがもやもやしてしまって不満がでるのも仕方がないのではないだろうか。
雰囲気や見かけに騙されて、本当は普段のものの方がおいしかったりすることも全て終ってから気付かされたりして。
だから涼香に勝ち誇るように言ってきた同僚をクリスマスケーキに例えたのはそれと同じだったりする。
その時には力をいれて頑張ってみたりもするけれど気合が入りすぎて今までの姿の方が良かったとか、
外しか見ていなくて後になってから中身を見たらびっくりしたとか。
結果を手に入れるために動くことは涼香だって共感できる。
それでも相手も本人も疲れて苦しまなくてはならなくなることもあるだろうからそのことも頭に入れて置いた方が良いわよ、
って意味をこめたつもり。
だって、さすがにあからさまには言えないからねぇ。
自分でも少々やっかみ気味で嫌味も入っているとは思うけど、本人への気遣いもしているつもりよ。
たまの特別なイベント。
否定もしたけれど決して嫌いな訳じゃない。
ただ決め付けられるのが嫌なだけ。自分や周りが楽しむことが出来たのならそれに勝るものはないし。
それが一人でも誰と一緒に過ごしても気持ちが伴っていればいいじゃない。
いつも新鮮で、外見も中身も自分でいられるのが一番楽しい過ごし方だって思うわ。
だからその楽しい時間を過ごすためにも本番に備えて
「クリスマスケーキ作りの練習は楽しんでやらなくちゃね!」
一人静かに燃える涼香であった。
*
デコレーションの一般的と言われるクリスマスケーキは普段作っているものに買ってきたチョコレートプレートや
サンタの砂糖菓子などを乗せて飾れば上等ね。
だけどそれだけじゃなくて、いつもと違うものも欲しいなぁ。
「あ、そうだっ」
あれだったら簡単にできるしいいんじゃない?
思いついたのはちょっとアレンジしただけでできるもの。
「さて、それじゃあ作ってみますか!」
涼香は言葉と共に足りない材料を用意し始めた。
プロフィットロール
□材料
プチシュークリーム(作るか市販のもの) 19個前後 コーティング用チョコレート(製菓用ですが市販のものでも。お好みで) 80g
ムースフィルムまたは厚紙を幅5cm位に切ったもの(直径11cm位のリングが出来る位の長さ)
□事前準備
1 ムースフィルムの場合は2枚繋げて直径11cm位の輪を作ります。
2 ケーキトレイや皿にのせてテープで数ヵ所止めてしっかりと固定する。
□作り方
1 チョコレートを鍋に入れて50〜60℃の湯せんで溶かす。そのままだと溶けにくいので細かく割るかまたは包丁で刻んで下さい。
* 絶対に火に直接かけないで下さいね。分離したり油分が浮いてきたりします。
チョコレートは長く保存すると変質してしまうので早く使い切りましょう。
2 人肌程度に冷めたチョコレートをシューにコーティング。シューの下のほうを手で持ち、表面にチョコレートをつける。
3 チョコレートの面を上にしてケースにいれる。
4 クリスマスツリーに見立てて積み重ねていく。
* チョコレートが接着剤がわりになります。1段目に7個、2段目にも7個のせ、3段目に4個、4段目に1個のせる。
5 チョコレートが乾いたらクリスマスの飾りつけ。
* お店で売っている食べられる砂糖菓子系の飾り(ひいらぎの葉やアラザンなど)や本物のひいらぎの葉を洗って飾っても素敵。
6 お好みで食べる直前に粉砂糖を茶漉しでふると綺麗。
*
「なんだかんだ言ってもやっぱり楽しんじゃうんだわ」
何がどうあれ、結局はうっぷん晴らしと食べたいがために作ってしまう。
懐と独り身の物悲しさはあったとしても、自分の気持ちさえ満たされていれば大丈夫。
「……まあ、多少無理しているとは思うけど。
わざわざ考えすぎてせっかくの楽しくなるだろう時間をぶち壊すのはもっと嫌だし」
一年一年、その時その時の時間を楽しみにをモットーに涼香は来る日に向けて計画を立てるのであった。
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