内緒にしてね　
　　　　　　　　２　



「フレイア本気なのか？」

「なによそれ」

せっかく人がやる気になってるって言うのに気分が殺がれることをあっさり言うなんて。

レイスをじろっと横目で睨んでも全然堪えた風もなく呆れた顔でこちらを見返すばかりだ。
もちろん最初からレイスに力を借りようなんて思っていない。専門分野が違うし忙しいのを更に忙しくしよう
なんていくらなんでも申し訳なさすぎる。かと言って全然力にならないかと言ったらそうでもないのだけれど。

「おまえ絶対ばれるぞ。ああでもその前に協力してくれるかどうかだな」

「なんで協力してくれないって思うの？」

「考えてもみろ。いくらあいつのいない時を狙ったっておまえの様子が違えば気がつくだろうし
　それよりもう既に釘を刺されているだろうな、フレイアに協力するなって」

「だって皆優しいわよ」

「あいつの前だからギリギリまでの態度を出せるんだろう。あいつのいない所ではできやしない、ばれたら後が怖いから」

「でも前は……」

「前は前。今のお前達の関係を考えれば踏み込めはしないだろうさ」

「私達の関係って」

レイスに言われた言葉に自然と顔が火照ってくる。きっと鏡で見れば見事に赤く染まっていることだろう。

「ま、諦めるんだな、秘密の特訓なんて。あいつに教わるのが誰にも迷惑をかけずにかつ喜ばすことができる最善の方法だよ」

「もうっ、人ごとだと思って簡単に言ってくれるわね。私は少しでも強くなってヴァルアスに近づきたいのに」

「その気持ちだけで嬉しいだろう。それでいいじゃないか」

「よくない。私だって守られるだけじゃ嫌なの！」

大切な人には傷ついて欲しくない。心も体も。だから自分のできる限り頑張りたいし力になりたいの。

「内緒にしてよ」

「おまえの気持ちはあいつにはとっくにお見通しだと思うけど、わかった。内緒にするよ。
　あいつの嬉しい顔なんて見飽きたからな」

そう言いながらも止めないレイスに自分のしようとしていることが間違っていないとどこか安心する。
まあ多少のひっかかりはあるけれど。

大切なものを守りたいから、私の気持ちは決まっている。ずっと。



next　　　back　　　月と焔の物語top