内緒にしてね
3
「また来ちゃいました」
色取り取りの花が咲き乱れる静かな場所。ここにはルティの大切な人が眠っている。
会ったことはないけれどもし出会うことができていればきっと好きになっていただろう人。
その存在を知ってから何かの折にこの場所へと来るようになった。
「ルフィアさん、最近ルティがとても優しいんですよ」
慌ただしい日々から一区切りがついてルティにも変化が訪れた。
緊張感から解放されて心に余裕ができたせいだろうか。ふとした瞬間に浮かぶ笑顔から目が離せない時がある。
その心からの笑顔に自然とこちらの顔が赤くなってしまって自分でどうにかしようにもどうにもできなくて。
「どうしたって聞かれても正直に言うのも恥ずかしくてつい意地を張っちゃうんです」
何でもないって顔を背けても怒ることなく肩を竦めるだけで逆にこちらが戸惑う始末。
その余裕のある態度がルティとは違って見えてドキドキしてしまうこともある。
「今までどこか自分が見守っている感覚もあったんですけど今はああ、男の人なんだって意識するように
なったせいかもしれません」
包んで守ってくれる一人の男の人。きっとこれからも気がつかないうちにもっともっと先に進んでフレイアにも
追いつけなくなるようになるかもしれないから余計に追い求めてしまうんだろうか。
「悔しいけれど本当に格好いいんです。だけどまだ言えないし言いたくないから……ルフィアさんも内緒にして下さいね」
ルティを見る度に心臓に変化があるってこと、もう少しだけ内緒にして下さい。
ルティに追いて行かれないように、隣にいつもいられるよう自信が持てるようになるその時まで。
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