昼下がりのお茶会 
   
女性陣編 



「レイア、そっちもう少し引っ張ってくれる?」

「こうですか?」

「そうそう。よしっ、バッチリね!」

マリオンは腰に手を当てて満足そうに微笑んだ。

今日は久しぶりの野外でのお茶会だ。それに加えて今回は王女の二人の兄も招いていた。
いつもはマリオンを中心に彼女の御付きのミルフィーンと何故か第一王子の護衛官レイアの女性だけで開かれる。
お茶会と言っても高貴な方々だけの集まる自慢話大会的なものではなく、気の置けない者同士の日常の出来事を気軽に楽しく
話しながらお茶を飲むといった肩の凝らないものだった。
レイアも公式のお茶会ではないとはいえ最初のうちは王女と同席であるが為に遠慮をしていたが回数を重ねるうちに次第に
打ち解け気軽に話せるようになっていた。

もちろん心の内ではほんのちょっぴり自分の態度はいいのだろうかと言う迷いと不安はあったけれども。

それが今回は良く知っているとはいえ自分達以外の人がいる。果たして緊張せずに過ごす事ができるだろうかと
考えを廻らせていた。

「マリオン、こちらも準備が整ったわ」

ミルフィーンの声と共に目にはいったのはワゴンいっぱいのお菓子。
これは全てミルフィーンのお手製で話と共に気持ちを盛り上げ幸せにしてくれる大切なものだった。

「それじゃあ、お菓子をテーブルに並べましょうか!で、あとは揃ったらお茶を入れて……」

「マリオン様、あの……」

「ん?なあに?」

「今日はカーク様とランドルフ様が来られるんですよね?」

「そうよ」

カークも来ると聞いてレイアの心臓が少し騒ぎ始めた。仕事柄普段は男性に囲まれることの多い自分が初めて
女性の中にいる姿をカークに見せることになる。
感情を表すことが苦手な自分の姿と他の二人の姿がカークの目にどのように映るのか不安になってしまう。
レイアは意識しだした自分を誤魔化すためにどこかぼんやりとしているマリオンへと再び声をかけた。

「お二人だけですか?それとも他にも来られる方がいらっしゃるんですか?」

「…………」

レイアの問いに楽しそうに笑みを浮かべていたマリオンの表情が曇り顔を俯けて黙ってしまう。
何かいけないことを聞いてしまったのだろうかと慌てたレイアだったがテーブルのセッティングをしていたミルフィーンが
マリオンの傍へと寄ると小さく震える肩にそっと手を乗せた。

「……ミルフィーン」

「大丈夫よ、マリオン。必ず来てくれるわ」

唇をギュッと噛み締め俯くマリオンの姿がとても小さく見える。そんなマリオンの肩を優しく励ますように叩くと
ミルフィーンはもう一度大丈夫と繰り返した。

「……うん」

ミルフィーンを見上げ弱々しく微笑むその姿はいつものマリオンと違ってとても儚げだったが、
それでいて瞳には決意の篭もった光が宿りいつも以上に強い気持ちが感じられた。

ああ、同じだ。戸惑ったり、心細かったり、弱気になったり。
自分が大切に思う人のことで心が揺れるのは。いろんな感情に心が動く、その人のことで一喜一憂することは。
今日のお茶会にはマリオンが大切に思う人を呼んだのだろう。その人が来るのかどうかマリオンは不安なのだ。

でもその人の前でマリオンがマリオンであったのなら

「大丈夫ですよ」

そうでなければマリオンがいつも笑顔を浮かべられていられるはずがない。

たとえ何かがあったとしてもマリオンの心をその人がわかっていてくれる人ならばマリオンを悲しみへと
向けるはずはないのだから。いつも明るく元気でいるのは悲しい気持ちが心を占めていないから。

「大丈夫です」

傍らに立つミルフィーンに笑顔を送ると彼女も同じように笑顔で答えた。

「きっと来るわ」

寂しい顔はマリオンには似合わない。

いつも元気で一生懸命で。そんなマリオンを見ていると傍にいるこちらまで温かい気持ちにさせてくれる。

だから今は不安な気持ちを楽しい気持ちに変えて待ちましょう。

昼下がりのお茶会は大切な人達と本当の自分で過ごせる時間なのだから。



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