毎日の習慣
人間にとって食べることは重要だ。十分に食事をしていないと動くことはもちろん考えることも疎かになってしまう。
必要な時に必要な分を食べることができるのは幸せなことだと思う。食べることが好きなフレイアにとって食事の時間は
至福以外の何物でもない。だからルティの食べることへの無関心さは到底理解の範疇外だった。
「ルティ、それで終わりなの?」
「ああ」
城内にある食堂に食事をしに行かないことも最初は納得できなかった。だが仕事の量を考えるとわざわざ食べに行く時間も
惜しいのはまだなんとかわかる。手早く食べられるものを食べるしかないのかもしれないがそれにしてもこれはあんまりだ。
「それは食事って言えないわ。ドライフルーツが少しとハーブティだけなんておやつにもならないじゃない!」
小指の先ほどの木の実に干した果物が数個と飲み物だけなんてとてもじゃないけどこんな激務に体が持つはずもない。
しかもそれさえ適度な時間に取るのでなくほんの少しの空いた遅い時間に取っているのだ。いくら栄養価が高いと言っても
身にもならないだろう。食べることへの意識に体は素直に反応するからだ。
「夜はちゃんと食べている」
「本当に?」
余程忙しい時以外ルティはフレイアの居残りを嫌がるために毎日どんなものを食べているかわからないがこの様子だと
十分怪しい。この手は使いたくなかったがルティが倒れない為にも強硬手段を取った方がいいだろう。
「サーシェスの所に行ってくる」
「ちょっ、待て。何を言うつもりだ!」
「何で止めるの?ちゃんと取っているなら大丈夫よね」
「う……あ、もちろん」
「じゃあ」
「フレイア!わかった、わかったから!」
「本当に?私と一緒にお昼を食べてくれる?」
「……おまえと一緒なら」
「ありがとう。約束よ」
強引すぎるやり方って自覚はあるけれどそれくらいしないとルティは食べてくれないし倒れてからじゃ遅いから
これくらい許して欲しい。それに食事をすることは、誰かと一緒の時間を過ごすことは楽しいって思ってほしいの。
「強引だ。他の誰かなら絶対に許さないのに」
ぽそりと呟くルティの顔は悔しそうでありながらもほんの少し口元に笑みが浮かんでいる。
大好きな時間がもっと好きになりそうな予感にフレイアの心もほんのり暖かくなった。
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