君だけを



「なつかしいな」

久しぶりに来た場所。昔より狭く感じるのはそれだけ成長したってことなのだろうか。
花々が咲き乱れる草原に腰を下ろしランドルフは視線を前へと向けた。
脳裏に浮かぶのは悔しい思いをして立ち尽くす自分の姿。いつも大好きな二人に置いていかれ泣きそうになっていた。

「ランドルフ」

「ランドルフ、行きましょう」

自分を呼びながら差し出された手。俯いていた自分が二人と一緒に走っていけるように。
素直にその手を掴めなくてもそんな時は二人の方からしっかりと掴んでくれた。

それがいつからだろう。二人ではなく一人だけ、ミルフィーンだけにそうして欲しいと思うようになったのは。
大好きな兄なのにミルフィーンに隣で微笑んで欲しくないと思う気持ちが湧いてくる。

自分だけに微笑んでほしい、見ていてほしい。

尽きることのない欲望。幼い頃から本当はずっと心の奥底で眠っていた願望。

君の全てを離さずにいたい。ミルフィーン、君だけを。



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