陽だまり



「まったく」

静かになったかと思えばこの始末。薄暗い部屋の一角だけうっすらと陽の差し込む場所に探していた少女はいた。
書庫と同じように光をいれられない訳ではないのだが慣れてしまったせいもあってシェルフィスには明るすぎるよりも
ある程度暗めの方が落ち着く。だがこの部屋にたびたび訪れるようになった少女には暗いよりも明るい方が良いのだろう。
特にここ最近は動くことをやめたかと思うと決まってこの辺りの場所にいた。

「マリオン……マリオン」

小さく呼びかけながら軽く肩を揺する。床に直接座り込み壁に背中をつけたマリオンは暖かな陽の光を浴びて
ぐっすり寝込んでしまっているようだ。シェルフィスが軽く揺すった位では起きる気配もない。

「この国の王女が床で昼寝か」

呆れ気味の声が思わずもれてしまう。それなのに自然と軽く笑みが浮かんできている自分にふと苦笑をする。
昔の自分からは想像もできないその姿に。

「マリオン、おまえは本当に俺を驚かせてくれる」

この部屋のように何ものも入れないはずだった自分がいつの間にかこんなにも受け入れ変わり始めている。

まるでここにある

「陽だまりのようだ」

あたたかく包み込み、そしてこわばった心さえ溶かしてくれる柔らかな陽の光のように。
シェルフィスは起こさないようにマリオンの隣に座ると同じように目を閉じた。



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