暗雲



うつむいて肩を小刻みに震えさせた姿にたまにどうしていいか分からなくなる。
一人で必死に湧き上がるものを堪えているんだろうと思うと胸が痛くなるけれど伸ばしかけた手は途中で止まって
声をかけることができない。

「シェルフィス」

名前を呼んでそっと抱きしめたい。大丈夫って伝えたい。

ほんの少し歩み寄ればできることなのにどうしてもできない自分がいる。俯いて辛そうにしている彼を苦しみから解き放ちたい、
一緒に分かち合いたい。会う度に冷たくあしらわれてもその気持ちは消して消えなかった。
少しは彼の手助けになれるのかもしれないなどと思うことがどんなに傲慢なのかわかっている。
私は彼にはなれない。彼と全てを同じと感じ取ることはできないのに。

「おまえにわかるものか!」

出会ってすぐに言われた言葉。自分の心の痛みばかりに囚われていたけれど本当に言葉通りだ。
私は何もわかっていなかった。ただ自分の感情ばかりを優先していた。
本当はその言葉こそ彼の気持ちを代弁していたのに私は気がつかずにいたんだから。

「マリオン?」

今はこうして私が傍にいてくれることを許してくれるけれど私の中にはあの頃の気持ちが消化されずに残っていた。
自分を許せない気持ちとシェルフィスを許せない気持ちの両方が燻っている。でもだからこそ私達はお互いの傍にいられるのかもしれないし
いられたのかもしれない。

そして私が今もシェルフィスを好きでいられるのは暗く立ち込めた雲を追い払うと同時に受け入れられたからだろう。
だって彼の瞳は私を吸い込んでしまいそうなほど曇りなく澄んでいるのだから。



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