演習場への回廊の途中でレイアは足を止めた。静かに降る雨が中庭の木々を濡らし生き生きとした輝きを与えている。
だが、レイアの心の中は空を覆い尽くす雲のようにどんよりとしたもので覆われていた。

雨は嫌なものを思い出させる。自分と向き合うことが出来ないのを改めて感じるのもこんな雨の日だった。

「レイア」

言葉と同時に回された腕がまるでレイアの不安ごと包み込むようにギュッと抱きしめる。
何も言ったことがないのにいつからか雨の日には隣に温もりがあった。

「カーク様」

忙しい公務の合間を縫って自分に会いに来てくれることは嬉しいと思う。でもそれで大丈夫なのかと
カークに負担をかけていることに心が痛む。

「何も心配することはないんだ。俺がレイアの傍にいたいからいるだけだよ」

「だけど……」

「こうしてレイアの傍にいられるとほっとする」

何も言わなくても考えていることを察せられている。耳元へと囁かれた声は身体を熱くさせるのに不安をどこかに
追いやってしまうように安らぎも与えてくれた。

いつ自分の傍からいなくなってしまうのだろうかと思っていることなど消し去ってしまう。
今この瞬間が全てでいいのだといけないことを考えてしまっている。
本当はそんなことはいけないのにわかっていてもうれしさと相反する寂しさを抱えている自分さえ許せそうだった。

「レイア」

優しく微笑んで回された腕に全てを委ねたくなる。

いつの間にか雨の日の思い出をどこかへと吹き飛ばされているのに気がつくのはカークがいなくなってからのことだった。



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