暗き中の光
仕事の手を休めはふと外を眺め見た。対角になった建物の先にはたくさんの人が忙しそうに行き交っている。
時間に追われているのかどの顔にも余裕が見られない。己の状況を重ねるとまとめていた書類を少し乱暴に
机の隅に追いやった。
「やってらんない」
尽きることなく次から次へと仕事が来る。本当なら今頃勤めを終え、家へと戻っているはずなのに
サーシェスの一言でこうして変わらず城へと身を寄せている。しかも今一緒に仕事をしているのは
そのサーシェスだ。不安も不満もそして仕事もたっぷりで疲れは回復することなく体へとどんどん積っていった。
「終わったか」
前触れもなく当然のように室内へと入ってきたサーシェスには溢れ出そうな感情を
押さえつけるように訥々と答えた。
「あと少しで終わります」
「そうか。ちょうどよかった。終わったらすぐにこちらを片づけてくれ」
当り前のように次の書類を差し出すと用は終わったとばかりに部屋を後にしようとする。
と会うのもまるで仕事の一環でしかないといった態度にとうとう我慢ができなくなった。
「いったいどういうつもりなの!」
日々仕事に明け暮れる。その為に城へと来たのだから当然のことかもしれないが先の見えない場所に
閉じ込められたようで苦しくて堪らない。何か言いたくともにもサーシェスは用件がある時だけしか会おうとしない。
自分の存在を認識するのは仕事だから、そんなにも……自分が嫌いなのかとそう思えてしまう。
「前に話しただろう」
「あと月が二回周る時までここにいるって」
「そうだ」
「私がここにいる必要があるの?」
「どういうことだ?」
「あなたは私を恨んでいるのではないの?私を憎んでいるからこうして囚えているとしか思えない」
自由であって自由でない。足枷がないだけの仮初の籠の中の鳥。
顔を合わせても離れていても何を考えているのか分からない。自分でどうにもできないから
怒りばかりが余計に募り、直接合えば言い争うほど憎しみが積って行く。穏やかな感情など遠いものだ。
サーシェスもに良い感情など持っているはずがない。
「そうだ。私はおまえを憎む」
「…………!」
「私ではなく私以外の者達に心を注ぐおまえを誰よりも憎くて堪らない」
普段感情をほとんど浮き彫りにしないサーシェスの本音。
言い争う時でもあまり変わらない姿が本音が見えたこの時には怖いほど表情に現れていた。
「、覚悟するがいい。おまえが逃げたくとも私はおまえを離すつもりはない」
狂喜が見えるほどの憎しみ。暗き中に見える光のようにがサーシェスに魅入られた時だった。
6周年企画作品 テーマ:感情 執着
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