失敗



「申し訳ありませんでしたっ」

リュークエルトに向かって思いっきり頭を下げる。申し訳ない気持ちで心臓がきりきり痛い。
自分が仕出かしたミスでリュークエルトはしなくてもいい仕事をしなければならなくなってしまった。
しかも期限が迫っていたせいでいつもの仕事をこなしながらフレイアの失敗を補わなくてはならなかったのだから
その大変さは並大抵ではなかったはずだ。きっとここ数日はろくに寝ていないのだろう。
端正な顔に憔悴の色が浮かんでいた。

「ちゃんと期限には間に合ったし大丈夫だ。フレイアが気にすることはない」

いつもと変わらない優しい言葉。だからこそ余計に自分の失敗の重さを感じてしまう。
落ち込むフレイアだったがふと頭に柔らかい感触を感じ俯いていた頭を上げた。

「そんな顔をされると俺の方が心配になってしまうよ。でももし気になるというのなら俺の頼みを聞いてくれるかな」

「頼み、ですか」

「ああ」

頷きながらフレイアに触れていた手をその頬へと移し微笑んだ。

「俺と明日一日付き合って」

「……え?でも」

「もちろん仕事じゃないからね」

一緒に出かけよう、と言ったリュークエルトの顔は嬉しそうだった。

「誰にも邪魔をされずに出かけることができるから」

普段仕事中一緒にいるけれどその時間とは意味が違う。
恋人として過ごす事ができる大切な時間。迷惑をかけてしまったことを重く受け止めているフレイアの気持ちを
紛らわせようとして言ってくれたこともあるのだろうけれどそれだけじゃない。
リュークエルトも二人だけの時間を大切にしてくれているんだとこみ上げてくれる気持ちを抑えながら
フレイアも嬉しそうに微笑み返した。



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