解放



夜空に浮かぶ月。暗い夜ともなれば人の作り出した灯りよりも辺りを照らし出し、助けとなってくれる。
三つの月が変化をもたらすといったことは一般の者達にとっては既に過去のこととなっており、月が空を
支配する時間であっても銀朱月のときを除けばほんの少し用心さえすれば外を出歩くことができた。

だが私達にとって月は過去から変わることなく、今でも全てを支配するものだった。
フィンドリア創立以前から続く家系にはそれぞれに課せられているものがある。
血という自分の力では取り除くことのできないものが雁字搦めに捉えて離さないためだ。
他の者達はわからないが私はこの輪廻の輪から抜け出せないことを悟った時、何度も自らの命を絶とうと
試みた。苦しみと恐怖に押しつぶされそうになっていた私は命を絶つことによってそこから逃れようとしたのだ。
死ぬことに恐れを抱くよりも生き続けていくことに恐怖を感じていた。

心の弱い自分に天は罰を与えたかったのだろうか。
自分に宿った力が自分の意志とは関係なく私の意志を阻み全て失敗に終った。

何故自分なのだろう。
他にもこの血を受け継ぐものはいるのに何故自分だけにこの力があらわれたのだろう。

絶望と苦しみに過ごす毎日。心は絶望に蝕まれ、ただ生きているだけの毎日が続く。
そんな自分のもとに変化が訪れたのは今までの何事もない日を思えばあまりにも唐突だった。
国の法律による受け入れで我が第二国事官吏室に受け入れた少女がリュークエルトを長き連鎖から
解放したのだ。それに引き続きヴァルアス、ルティまで。
完全に無事とは言えなかったが彼らの力が消えたのを私は感じられた。

どうして彼らだけが!!苦しめられてきたのは同じだったはずだ。
何故彼らだけが解放され私は一人取り残されるのか。
想いに駆られた私は上に掛け合って少女、フレイアの残留をもぎ取った。
彼らに起きたことが私に起こらないとは言えない。
それに完全に彼らの力が消え去ったとは私には信じられなかった。
それ程に長き年月を超えて伝わってきたものだから。

銀朱の月は呪いの月。
私はその呪いが解けるのを見届けなければならない。
我らの呪いの解ける時、それは真の解放、私は私になる。



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